・土工事(根切り)の管理ポイントを解説
・ばか棒、スタッフ、箱尺へのレベルの出し方
土工事(根切り)の現場管理
工事着手後、序盤に始まる工事です。前回の記事で土工事はどんな工事があるのか?何のために行うのか?土工事の入口の内容を書きました。今回は現場管理目線の記事になります。
根切りといってもまず何をするの?
大まかな流れとしては下記のようになります。
- 掘削重機搬入
- 根切り
- 床付け
土を掘って掘削した床をならす所までの解説をしていきます。
着工前の計画
先に上げた3点の作業内容がありますが、単純なようで土工事の管理は他の工種に比べて難しいです。また土を掘り進めた際に、地中埋設物が出てきたり湧き水が出てきたりとイレギュラーな対応を求められることが多いです。
まず計画の段階で考えなくてはならない物を挙げると
- 基準のレベルはどこから取るか
- 総堀か、つぼ堀か、布堀か適当な根切り方法の検討
- 重機のサイズ、種類の選定
- 重機の搬入路、旋回場所、敷き鉄板等の作業路盤の計画
- 発生土の量はどれくらい出るか?
- 発生土は埋戻し用に現場に置いておけるか?運搬、処理するか?
- (杭工事があった場合)杭残土の処理方法は?
- 根切り時の土留めは適切か?
- 湧き水・溜水などがあった際の排水計画は出来ているか?
などなど一例ですが、事前に計画しなければならない内容は沢山あります。
現場経験が無いと「どのように計画するか」は考えるのが難しいと思います。場数を踏めば踏むほど当然身に付いてくるものですが、現場管理をしながら自分なりに「このケースは次からこうやった方が円滑にいきそう」という視点を持って管理するのが重要です。
着工中の管理
ここもまずざっと要点をあげます。
- 重機搬入
- 設計図(施工図)の確認
- 根切り位置の説明
- 根切り深さの説明
- 図面との整合性のチェック
- 釜場等の検討
住宅を建てるのか、中規模、大規模な建物を建てるのかで解説内容が変わってきますが共通して上記のような内容があります。
1.重機搬入
重機搬入は一般にバックホーなどの掘削重機をトレーラーなどで搬入します。現場のどこに重機を下ろすか、トレーラーの旋回場所など説明できるようにしておきましょう。
誘導員等の配置が適切でないと、歩行者との事故を引き起こす可能性もありますので安全管理も重要です。
2.設計図(施工図)の確認
根切りは設計図の基礎伏図、床梁伏図、基礎・基礎梁リスト等を見ながら施工します。(別途、収まり詳細図や雑詳細図などの図面にも関連する内容が含まれている場合があります)
一般的な複雑でない住宅などでは設計図を見て施工しますが、大きい建物や複雑な建物だと設計図を基に書いた施工図を見て施工します。
基礎底に砕石や捨てコンクリートなどがあり、根切りをする施工業者に説明するときは「この基礎底はGL-1000で、この梁底はGL-800です」などのように全ての位置と深さを明確にしておく必要があります。
また計画段階の話ですが余堀りは掘削深さにもよりますが500~600㎜みるのが一般的です。(人が掘削床でしか作業出来ないような環境の場合)
※余掘りとは・・・鉄筋や型枠などの作業性を考慮して幅を多めに掘っておくこと。例えばW=300の梁があったとしたら両側に500㎜掘って500(余掘り)+300(梁幅)+500(余掘り)で1300㎜の幅で掘るということです。
3.4.根切り位置、深さの説明
事前に設計図(施工図)の読み込みをしておき現場で施工業者に説明をします。何種類も深さがある場合は色分けした図面などを根切り図として用意しておくのが業者も解りやすいし、自分も管理しやすいです。
間違いのない確認した図面で、解りやすく説明することが当たり前ですが非常に重要です。
5.図面との整合性のチェック
1番から4番までは現場で根切りをするまでの準備です。施工業者に掘るための重機を用意して、説明して終了ではありません。ここからの管理が重要です。
通りの確認
逃げ杭を使用して通りの確認を行います。
逃げ杭を使って水糸を張り、地面にカラースプレーを使用して通り芯、余掘りを含んだ根切り幅を地面に落とし込んでいきます。
現場により色々ですが、逃げ杭は元請けが事前に用意して、カラースプレーで設計図(施工図)を地面に落とし込んでいく作業は土工事の施工業者がやるのが一般的と思われます。
いざ掘り始めたら逃げ杭同士を睨んで通りが曲がっていないか確認します。掘る直線が長ければ長いほど曲がっていく可能性が高いので途中で根切り底に通り芯を移すなど業者と打合せしながら現場を進めていきます。
幅の確認
通りと同じく、設計図(施工図)通りに余掘り幅が通り芯からのよりと現場があっているか確認します。
根切り深さの確認
レベルの使用に慣れていないと現場管理初心者がつまずく所です。基準の高さから根切り底が正しい深さか確認します。
回転レーザーレベルを使用して高さを管理している業者が多いです。現場で「バカ棒にレベルを出して欲しい」と業者からお願いされるケースがあります。
現場で定めている「GL+1000」などの基準のレベルから回転レーザーレベルを使用して、バカ棒に根切り底のレベルを出すスキルが必要になります。
お願いされていなくても、業者が出したレベルが本当に正しいのか確認してから作業を進めるのがベストです。
バカ棒・・・桟木などの現場の仮設でよく使用する木材など棒状の物
棒に回転レーザーレベルの受信機をつけて使用します。
バカ棒 レベルの出し方
バカ棒にレベルを出すという点を掘り下げて解説します。
現場では一般に、写真のような桟木などに回転レーザーレベルの受信機を取り付けて高さを管理します。
「桟木の下端から測って、いくつの所に受信機をつければ根切り底なのか?」
このレベルの出し方を解説します。
仮に根切り床がGL-1000 だとします。【①出したいレベル】
また現場の基準レベルがGL+1000で出ているとします。【②レベルの基準】
そこに回転レーザーの据付け高さがGL+800とします。【③レベルの据付け高さ】
この3つの条件を図化します。
考える手順は2つです。
回転レーザーはGL+いくつの所にあるか?
まずこの数値が解らないと答えを出せません。次に
回転レーザーからいくつ下がったところが出したいレベルか?を計算します。
以上の考えからレーザーから800㎜下がってGLとなり、GLから1000㎜下がった所が根切底なので答えは1800㎜下がりの位置が根切底です。棒の下端から1800㎜のところに印をつけます。
3つ数字が出てくるのでややこしいのですが、重要な点は1つだけで「据え付けた回転レーザーレベルからいくつ下がったところが根切底か」というのを順番に追って計算します。
画像のような絵を手元のレベルブックなどに書けば間違いがかなり減ります。
レベルを間違ってしまったら
どの段階でレベルの間違いに気付いたかにもよりますが、土工事でのレベル間違いは最悪数百万円単位で損害になりえます。
「根切り底のレベルの間違いに気付かず捨コンまで打った」などの事例も聞いたことがあり、気付くのが遅れれば遅れるほど被害は大きくなります。間違ったと気付いた時点で周りに伝えましょう。
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