・長尺金属板葺と折板葺の違い
屋根工事における専門用語・名称
建築の工事管理をするにあたり、業界用語(専門用語)はかなりあります。
中でも屋根工事に関しては現場管理の駆け出しの頃「この人たちはどこの何のことを言っているのだろう?」と職人さんの話を聞いていました。
まさに何が解らないのかが解らない状態です。
屋根工事は建築工事の中でも専門用語が多くあり、名称から覚えていくのが必須になりますので、各部位や部材の名称を解説していきます。
現場でよく飛び交う名称
工事現場での日常会話でも頻繁に使用される物を3つ挙げます。
ハゼ
屋根の写真を載せます。左の写真が縦ハゼ葺、右の写真が横ハゼ葺という葺き方です。
写真の違いを理解できればハゼがどの部分かが解ると思います。
屋根は金属板を何枚も繋いで繋いで作られます。そのつなぎ目部分の事を「ハゼ」と言います。
横ハゼ葺きのイラストです。現場では屋根を葺く際に「繋ぎ目であるハゼ」をひっかけたり折込んだり掴んだりと様々な方法で金属板同士を繋いでいきます。
ハゼの一例で画像のような種類があります。
画像:日本金属屋根協会様より引用
葺く
すでにこの記事でも何回か使用している単語ですが、「葺く」とは屋根仕上げを施工する際や、屋根仕上げの張り方の名称などに用いられる単語です。
現場では「軒先を葺く時は足場が必要だな~」などと使われたり、屋根の作り方の名称としては「一文字葺き」や「瓦棒葺き」などと、施工全般に広く使われる用語となっています。
屋根板金並びに瓦を施工する際にも用いられます。
吊子
吊子とは、屋根下地に屋根仕上材を固定するために設けられる部材です。
屋根の葺き方の種類は数多くあり、その形状により吊子も形を変えます。ここでは代表的な吊子の画像を3つ挙げます。
横ハゼ葺の吊子
写真のような金属板を吊子と呼びます。この吊子を屋根の下地材に釘等で打ち付けて、先述した「ハゼ」部分に引っ掛けます。
このようにして、仕上材の鉄板葺きを屋根下地に固定します。
縦ハゼ葺についても同じような吊子を使用します。(吊子の折込み形状が変わります)
※画像は縦ハゼ葺きの蟻掛け葺です
瓦棒葺き(心木なし)の吊子
ここで紹介する瓦棒葺き(心木なし)以外にも様々な吊子形状があります。
屋根下地である野地板の上に断熱材を敷込む時に用いられる吊子で、既製品の物を紹介します。
画像左の吊子をルーフィング施工後に屋根下地に固定します。(画像右)
吊子設置後に断熱材の敷込みと鉄板葺きを行い、吊子の上部にキャップをかぶせます。右の写真の一番手前の吊子だけキャップをかぶせています。
キャップをかぶせた後、上記画像のように金属板のキャップをさらにかぶせて仕上がりとなります。
折板葺の吊子
折板葺きという葺き方はタイトフレームと呼ばれる屋根下地材を取付け、屋根を施工していきます。
赤く丸で囲った部分が折板葺き屋根の吊子で、吊子の下の三角部分がタイトフレームです。
吊子上に折板を乗せ、締付を行います。
吊子まとめ
いくつかの吊子の例を挙げました。
屋根は雨漏れなどの漏水を防ぐため、仕上げ材に穴を開けないという事が重要です。
どのような葺き方でも共通して、吊子と屋根の下地材を釘またはビスなどで固定し、吊子に仕上げの鉄板をつかむことにより、仕上げ材に穴を開けることなく施工出来ます。よって雨仕舞の点から吊子は非常に重要な部材と言えます。また並行して屋根が強風などで飛ばされないよう、強度においても重要なパーツとなります。
各部位の名称
次に挙げるのが、屋根の部位の名称です。
この見出しも工事現場でよく飛び交うワードです。
破風・鼻隠し
切妻屋根の改修現場で「破風はそのままで、鼻隠しは部材を全部取り換える」と聞いて部材の場所をイメージ出来れば読み飛ばして問題ありません。
妻面の屋根端部が破風、屋根勾配の水下側の屋根端部が鼻隠しとなります。
屋根の端部という共通点はありますが、家の面によって名称が変わります。
軒先・ケラバ
この二つは先述した鼻隠しと破風の関係と似ていて、水下側と妻面側で名称が分かれます。
図中に鼻隠しと破風が登場しています。
鼻隠しの断面を含む→軒先
破風の断面を含む→ケラバ
破風や鼻隠しは部材の名称として使われるのに対して、軒先とケラバは壁から屋根の先端までの範囲の事を差します。
現場では「軒先の詳細図と、ケラバの詳細図を書いといて」などと言われることがあります。それぞれ納まりが変わるので、場所を押さえておきましょう。
また片流れ屋根では水下側と、水上側も軒先となります。
棟(むね)
棟(むね)は屋根を1つ1つ面で見ていったとき、2つの面が重なり「く」の字型に出る所を差します。
谷
谷は棟の逆で「く」の字型にへこむ所を谷と言います。
ドブ
ドブは降雪地域などの「無落雪屋根」などに使われます。
屋根の上で雨や溶けた雪水を受ける排水溝みたいなものです。
唐草
唐草とは画像のような部材を用います。(形状は一例)
現場での納め方は次の図面のような形状となります。
軒先並びにケラバにも取り付けられる部材です。なぜ唐草が必要なのかというと、屋根端部の雨仕舞を良くするために設けられます。
板金下地は木材の合板や野地板などを使用する事が多く、屋根材である金属板で包み、水に触れないようにする事が重要です。(長期に渡り水が触れると木材が腐る為)
また施工上も屋根仕上げ材である長尺金属板葺き(画像の青線)だと現場によっては10mを超えることも多くあります。
唐草があることにより、少し長めに材料を搬入し現場で唐草に合わせてカットし掴むことが出来るので、現場に合わせた納まりの良い施工することが出来ます。
写真左は長尺金属板葺きのイメージです。写真右のように唐草より少し伸ばした位置でカットし、折り返して唐草に掴みます。
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