・必ず行わなければならない安全管理の解説
・安全管理の業務効率化の考察
建設業の工事現場の安全管理
現場の安全管理は「労働基準法」や「労働安全衛生法」などの法律に準ずる管理や、「労働安全衛生規則」や作業によっては「クレーン等安全規則」「ゴンドラ安全規則」などの規則に沿った作業確認や書類準備など、多くの決まりに沿って現場管理を行います。
いつどのような安全管理が必要なのか
このページでは現場事務所を構えるような、建築一式工事6000万円以上の工事(安全書類を必要とする工事)を想定して解説していきます。
毎日行う安全管理
現場稼働日に毎日確認や、記録しなければならない管理項目です。
書類・作業名 | 必要なタイミング | 手間(作業に要する時間)/★5中 | 備考 |
---|---|---|---|
KY活動 | 作業開始前 | ★ | 安衛法 |
日誌(安全指示書・安全日誌) | 昼礼など | ★ | 安衛法 安衛則 |
酒気帯び確認 | 出勤前、退勤前 | ★★ | 道路交通法 |
現場の日常点検 | 現場稼働中 | ★★★ | 安衛則 |
KY活動
リスクアセスメントの一環です。毎朝作業開始前に、今日作業を行う内容に潜むリスクを検討します。可能性や重要性などを数値化し、危険性の評価点を見積もります。
KY用紙を各職長が記入し、その内容を各職人に伝達(署名)します。こうした運用方法で当日作業する人全員がリスクアセスメントを行ってから作業開始する運用をしている現場がほとんどかと思います。
各職種のKY内容を元請が確認し、危険度が高い場合は元請が対策を講じます。
日誌(安全指示書・安全日誌)
翌日の作業内容の確認、下請け業者間の作業間調整、搬出入の確認など作業に関しての調整を主に行いそれを日誌にまとめます。
日々動く現場で、環境や作業エリアが多様に変わります。午後1時に職長が集まり「昼礼」として作業間調整を行うことが多いです。
酒気帯び確認
毎朝と退勤前に酒気帯び確認を行います。アルコール検知器で飲酒していないかを確認し、それを記録します。
現場の日常点検
作業員の服装や、第3者災害の防止、火災防止や飛来落下物の防止などをチェックし、日常点検記録として記録します。
特定のタイミングで行う安全管理
現場着工時や特定作業(クレーン作業、足場組立など)で行う安全管理です。
書類・作業名 | 必要なタイミング | 手間(作業に要する時間)/★5中 | 備考 |
---|---|---|---|
安全衛生管理計画 | 着工前 | ★ | |
安全衛生管理組織 | 着工前 | ★ | |
施工体制 | 協力業者着工前 | ★★★★ | |
施工計画 | 協力業者着工前 | ★★★ | |
点検 | 重機使用、足場組立などの特定作業時 | ★★ | |
表示・掲示 | 足場組立時やSDS掲示など | ★★★★ | |
作業間調整 | 重機等の稼働による立入り禁止区域などの周知 | ★ | |
法的届出書類 | 道路使用やクレーン設置報告など | ★ | |
事故報告 | 事故発生時 | ★ |
安全衛生管理計画
労災防止対策や安全衛生管理の方針など、工事の全体を通して計画を行い、書類化します。
安全衛生管理組織
統括安全衛生管理者、安全管理者、安全責任者、衛生管理者などの現場管理体制において、組織内の役割を明確に記した書類をまとめます。
施工体制
下請業者を含めどの会社が現場に関わり、会社ごとに工事内容や安全衛生管理者が誰などの工事全体の施工に携わる体制を解りやすくまとめます。
施工計画
各工種や、作業内容ごとにどのようにして工事を行うのか、具体的に作業内容をまとめたものを作成します。
点検
足場組立時や、重機稼働時などにチェックリストを用いて点検し記録します。
表示・掲示
現場内の安全通路や、足場の積載荷重表示、安全看板、立入り禁止表示などの現場作業者すべての人に現場内の危険個所等が解るように表示、掲示します。
作業間調整
クレーン作業、バックホーでの作業などの主に重機が動くときなどに施工計画書として立入り禁止エリアを周知したり、合図の方法などを決め、事故が起こらないよう作業間調整を行いその内容をまとめます。
法的届出書類
道路使用や道路占有、足場の設置届など法的に必要な諸官庁提出書類をまとめ、提出します。
事故報告
事故が起きた時に、どこにどのような連絡をするか緊急時対応の連絡体制表をまとめます。事故が起きた場合にすぐ対応できる措置を取ります。
月次で必要な安全管理
書類・作業名 | 必要なタイミング | 手間(作業に要する時間)/★5中 | 備考 |
---|---|---|---|
安全パトロール | 月1回以上 | ★★ | 現場規模等により不要 |
災害防止協議会 | 月1回以上 | ★★ |
安全パトロール
安全衛生計画で月例安全パトロールを設定する場合が多く、現場の危険個所の確認などを月次に行います。
災害防止協議会
下請け業者の安全担当者などが集まり、元請け主導で労働災害を防止する目的に翌月に行う作業の危険個所や災害防止について協議を行います。
以上のように、日常的に現場の危険個所に目を光らせながら、法・規則にも準じて安全管理を行います。
安全管理の業務効率化
冒頭でも説明した通り安全管理の1番の目的は「現場で事故をおこさない」ことだと思います。
現場では安全書類の管理に時間を全振りすると、ほかの管理(5大管理のうちほかの管理)が出来なくなるので数多い安全書類のうちどこかが欠けてしまうことが多くあるのが実状です。
また安全書類が完璧に出来ているからと言って、事故がおこらない訳では無いです。事故が起こる可能性を低くするために安全書類があり、一番重要なのは現場を見て危険個所をつぶすことだと思います。
近年は安全書類が増えており、書類がないと現場を見ていないとみなされることが多いです。現場管理の人数体制や、工期の長い短いによっては現場の安全管理の目的が「現場を見ることより書類をまとめること」となっている事も多く感じます。
これからの安全管理
安全書類は現場に常駐する技術者が行わなければならない仕事と、現場に常駐していなくてもできる仕事も多くあります。
「グリーンサイト」や「建設キャリアアップシステム」のようにITを用いて安全書類などの仕事効率化が出来るようになってきており、安全管理体制の幅が広がり良くなってもいます。
時代に合ったツールを使って効率的に安全管理を行っていきましょう。
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