試験の目的
流動性試験です。グラウトを充填する箇所に隙間なく材料が行渡るかを確認するために行います。
例えば下図のようにアンカー固定にグラウトを使用するとします。
(左図:ハッチ部分にグラウトを充填したい)
試験をせず固いグラウトを流し込んでしまうと、穴の中に空隙が発生してしまうおそれがあります。
そういった施工不良を防止するため、施工前に流動性を確認します。
また無収縮モルタルなどの製品にも「流動性の規格値」(コンシステンシーともいわれる)が決められていて、言い換えればその製品の性能通りに現場で使用されるか確認するために試験を行います。
試験方法
Jロート試験という名前の通り漏斗を使用します。
左写真のような一般的な漏斗の形状ではなく右写真のような専用の漏斗器具を使用します。
J14漏斗、JP漏斗、JA漏斗、Jロート14など、ロート試験に使用される漏斗の種類は様々です。
【J14漏斗】 | 【JP漏斗】 | 【JA漏斗】 | 【Jロート14】 | |
規準 | 土木学会 | 道路公団 | ||
上部孔内法径 | φ70 | φ70 | φ100 | φ70 |
下部孔内法径 | φ14 | φ14 | φ8 | φ14 |
漏斗長さ | 392㎜ | 422㎜ |
|
395㎜ |
内容量 | 約630mL | 約630mL | 約1000mL | 約630mL |
漏斗のサイズは上記表の通り。いろいろありますが基本的には各メーカーの製品カタログでどの漏斗を使用するのか書かれています。
後述の写真付き解説の「試験の手順」で使用したものは「J14漏斗」を使用しました。
漏斗にグラウトを流し込み、ストップウォッチを用いて漏斗内のグラウトが落ちきるまでの時間を測定するというシンプルな試験方法です。試験は2回行います。
合格値
使用する材料で合格値が違うため、施工前にメーカーカタログ等を確認する事。
後述の「試験の手順」で使用したものは目標軟度8秒±2秒が合格値。(6〜10秒で合格)
物によっては4~8秒が合格値など使用材により様々です。
また、材料の配合について
気温・水量・材料撹拌時間などは仕様で定められています。
調合に関しても試験前に使用材料のカタログ等を確認すること。
試験の手順
①材料確認
②気温(室温)確認
③材料温度確認
④水温確認
⑤水量確認
⑥材料撹拌
⑦練上がり温度確認
⑧試験1回目
⑨試験2回目
⑩供試体採取
①材料確認
施工前に使用材料の確認を行います(グラウト材)。バッチ番号も控えておきましょう。
②気温(室温)確認
今回の使用材はメーカー推奨で3度以下では使用を控えるとありました。
推奨気温内であることの確認作業です。
冬の施工以外ではほぼ気温(室温)に問題があるという事は無さそうです。
③材料温度確認
材料袋に温度計を刺すなどして測定します。
材料温度は調合最後の「練上がり温度」に影響します。
④水温確認
調合の最後の確認作業である「練上がり温度」に影響します。
ロート試験で不合格だった場合、水温・水量の調整を行います。(再試験)
⑤水量確認
今回の材料仕様の水量は4.3kg~4.8kgと定められていて、その範囲内で水量を決めます。
試験時には調合に使った水量の確認も行います。
ロート試験で不合格だった場合、水温・水量の調整を行います。
⑥材料撹拌
撹拌の時間もメーカーで決められていることが多いです。
今回使用材は「3分を限度に2分以上練り混ぜる」という規定がありました。その範囲内で施工します。
⑦練上がり温度確認
グラウト材と水を調合して撹拌を終えた時、練上がり温度を測定します。
今回の材料は5℃~35℃が推奨範囲内でした。写真は範囲内であるため合格。
⑧試験1回目
いよいよ漏斗を用いた試験の開始です。
左写真:漏斗内がいっぱいになるように練り上げたグラウトをいれます。そして指を離すと同時にストップウォッチで計測開始。
右写真:グラウトが途切れた時にSTOP。結果は6.44秒です。
カタログ基準値の8秒±2秒に納まっている為、合格です。
⑨試験2回目
同じ手順で2回目の測定です。結果は6.75秒です。
基準値8秒±2秒に納まっている為、合格です。
⑩供試体採取
これはロート試験ではなく圧縮強度試験ですが設計図で記載されている場合はセットで行います。
現場では同じ流れで行いますので忘れずに。
また余談ですが気温により、コンクリートは材齢3日でだいたい5N/m㎡過ぎるくらいの圧縮強度です。
無収縮モルタルは同じ材齢3日で30N/m㎡以上出るものもあります。初期強度が早いのが特徴なので覚えておきましょう。
考察
ストップウォッチでSTOPにするタイミングについて、最後は「ポタポタ」と玉になって数秒グラウトが落ちます。「最初に水滴として途切れた時」を目安にしましょう。
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