・冬の建築費用が上がる理由
・住宅など冬の建築を考えている場合の検討記事
冬の現場ってどうやって作業をしている?
降雪地域の冬の現場は非常に大変です。
筆者も転職で北海道へ移住したとき「冬は雪が降るし現場はやらないもの」と勝手に思い込んでいましたが、吹雪だろうが気温が-10度だろうが現場は稼働します。
ではそんな寒い中、新築現場ではどのような作業をして、なぜ金額が上がるのか。3つに焦点をあてて解説したいと思います。
①除雪
②品質管理
③見積もり金額(建設費用)が上がる要因
除雪
除雪をしないと現場で作業するどころか、出勤してきて車を停めることすら出来なかったりします。
また現場作業でその日10人稼働するとして、朝の1時間除雪でまともに作業出来ないとなれば10時間分も作業時間が削られることになります。仮に時給1000円として1万円。それが毎日となるとすごい時間数です。
そういったロスが出ないように現場監督が考えて対策をします。現場の規模や工事の進み具合で除雪のやり方が違います。下記に規模別で除雪方法の解説をしていきます。
小規模の新築現場(住宅など)
住宅などの新築は大規模建築に比べて敷地が狭く、敷地をフルに活用しながら建築をします。
材料置場、加工場所、重機設置範囲、足場の上など敷地全体を除雪しないと作業が出来なかったり、資材すら置けません。
除雪方法
日によって降雪量が違うので、方法も色々あります。
■少量の降雪の場合(~10㎝くらい)
現場監督が早出して除雪したり、現場作業員が出てきたら手伝ってもらったりします。
除雪のスコップや除雪機を使用して敷地の邪魔にならない所に雪を堆積します。
また塩カル(融雪剤)をバラまいたりする方法もあります。
■降雪量が多い場合
豪雪地帯だと1夜で車が停められないくらい積もります。
冬の天気予報のチェックは欠かせません。大量に降ると予報されている日は除雪業者を事前に手配して、現場作業開始前に除雪をします。
大規模の新築現場(商業施設、工場、社屋etc…)
大規模の建築現場は敷地も広く、除雪作業の量が多いです。
簡単に雪まつりが出来そうなくらい大きい雪山が出来ます。
除雪方法
①タイヤショベルを冬期間レンタルする
②業者に除雪を依頼する
上記の2つが一般的です。敷地が大きい分、除雪スコップや除雪機で雪かきをするのでは効率が悪く大人数の作業に影響が出ます。重機を使い、除雪を行います。
品質管理
冬は夏に建築するよりも品質管理に手間やお金がかかります。さらには自然を相手に建物を建てるので管理が難しいです。
注意したい点は沢山ありますが、建物の品質に大きく影響する4つに絞って解説します。
①コンクリート工事
②屋根工事
③内装工事
④外構工事
①コンクリート工事
冬期間のコンクリート打設には品質を確保するための準備が色々あります。
まずコンクリートの簡単な基礎知識として
①水硬性で打設後じわじわ強度が上がっていく特性がある
②4週(28日)でやっと目標の強度が出る
③打込み時はコンクリートに悪影響を及ぼすおそれのある積雪や、打ち込み中の温度は2度を下回わらないように適切な養生をする。
④打設後の養生は5日間以上2度以上に保つ。(早強の場合は3日)
コンクリートの特性や施工時の決まりごとの1部を抜粋しました。こういった条件を守るために、冬の基礎コンクリート打設では「上屋」をかけます。
エコットハウス様より引用
ここでの上屋とは、足場材などでコンクリート打設場所をぐるっと囲います。そこにシートをかけて1つの部屋にしてしまうことです。
上屋を作っただけだと外気温はマイナスなので、コンクリート温度を2度以上に保てません。そこで上屋の中でストーブ、ジェットヒーターをガンガン焚き、採暖します。
打設後は夜通し暖房をかけなければいけないので、90Lの灯油タンクが一晩でほぼほぼ無くなります。
養生期間は夜間や土日などの場合も職員や警備員が出勤して燃料の管理をし、養生を行ったりします。
建物を支えるコンクリートに凍害があっては大問題です。冬期間の一番重要な品質管理がコンクリート工事です。
②屋根工事
建物の屋根は設計仕様によりますが何層にもなります。一般的な屋根工事の流れでは
母屋→屋根下地→防水層→板金
と、少なくとも屋根下地から数えると仕上げまで3層以上になります。冬期間の施工で1日で仕上げまで完成出来れば問題はないですが、到底無理です。
木造住宅を例にとると、建方をして屋根の下地まで張り終えたとします。その時点で晴れの日が続けば良いですが、降雪が予想される場合は作業終わりにブルーシートなどを一面にかけて養生が必要です。
次の層を敷く時に雪が積もっては作業が出来ないという理由と、下地に水を含ませたくないからです(氷点下であれば凍結します)
③内装工事
内装工事になれば天井・床・壁は囲われている状態です。
ですが内装工事に使用する接着剤や塗料は氷点下では品質を保証されていない製品があるので注意が必要です。
建物の中ではブルーヒーターやジェットヒーターなど暖房を焚く必要があります。
④外構工事
コンクリート舗装などの施工時は要注意です。基本的には①のコンクリート工事と同じでコンクリートの養生方法が重要になります。
「冬期間を避けて春先に外構工事を行う」という契約が出来れば一番品質を確保した上で引渡しまで行えます。
出来ない場合、冬のコンクリート舗装には色々問題が出ます。上屋をかけたくても基礎CON打設のように足を立てる部分が無いので掛けられません。
上屋の無い状態で工事を進めると、1つ目に問題なのが鉄筋を組んでから打設までの間に雪が降ると、除雪できません。網目のように鉄筋を組んだ後にその中をスコップで除雪しようとしてもスコップが入りません。
対策としては「お湯を手配」します。
アジテータートラックにお湯を積んできてもらい、雪がたまった部分にかけます。
お湯を頼んで地面にバラまくので、勿体ない気がしますが化学製品では無いですし雪を解かすには有効な手です。
他の方法として無塩タイプの塩カルをかけるというのもありますが、鉄筋は錆びなくて良さそうですがコンクリートの相性が解りません。
打設後の養生方法は、なるべく気温の高い晴れの日を狙って打設し、可能な限りシート養生をします。採暖は練炭ストーブを用いてコンクリート温度が2度を下回らないようにします。
見積もり金額が上がる要因
冬期間の現場の仕事の一例を説明しました。前述の仕事内容が金額にも反映されますので最後にまとめます。
■除雪に伴う費用
除雪手間(現場除雪作業、除雪業者代)
除雪器具代(融雪剤、スコップ等)
重機リース代(除雪機、タイヤショベル等)
燃料代(機械を使用する場合)
■品質管理に伴う費用
上屋掛け、撤去費用
CON養生の採暖費用
採暖に伴う管理人件費
養生材費用(ブルーシート、練炭等)
アジテーター手配費用(お湯手配の場合)
養生材施工手間
CON温度補正費用等(冬期間の強度補正や、混和剤、左官モルタル防凍材等)
■暖房に伴う費用
現場事務所・作業員休憩所
冬期間は上記のような費用が加算されます。
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