耐火被覆とは?種類や工法の違いを徹底解説

現場管理
・耐火被覆の目的と種類の解説

耐火被覆の目的

耐火被覆は、建物に必要な耐火性能を持たせるために行う工事です。

耐火性能についてざっくり説明すると、火災があってから建物の中にいる人が安全に逃げ切るために必要な性能の事を言いますここで言う「安全に」とは「建物が倒壊しない」ことを指します。

たまにニュースでビルやマンションでの火災を見ますが「全壊」まで至る火災はほぼ無いと思います。住宅などで隣の建物に火が燃え移らないのも同様、外壁や上下階には相応の耐火性能を持たせています。よって人が避難するまでの間、建物が倒壊しないようになっています。

ではその性能はどこで確認するのか、あくまで施工者の視点で見ると設計図を見れば分かります。構造の特記仕様書などを見れば、柱や梁などに「1時間耐火や2時間耐火」など部位と必要な性能が記載されています。

耐火性能の種類もいくつかあり、他にも30分耐火や3時間耐火など法令で定められています。

また種別についても記載されており、次に解説していきます。

耐火被覆の種類

鉄骨の耐火被覆の種類にはどのような物があるのか、標準仕様書では次の物が記載されています。

①耐火材吹付け
②耐火板張り
③耐火材巻付け
④ラス張りモルタル塗り
⑤耐火塗料
 等

となっております。
工法は多くの種類があります。その理由美観性に影響するものや施工性の違いなどが挙げられます。

また①~⑤の中で様々なメーカーから製品を出しており、一般に構造部には国土交通省で認定を受けた材料を用います。(認定番号:FPから始まるものなど)
耐火時間により施工時の材料の厚みも変わりますので、施工前には必ず

耐火時間
 (設計図の特記仕様書に記載)
認定品の料および工法と施工時に必要な厚み
 (メーカーカタログ等に記載)

を確認する必要があります。

次にそれぞれの工法の特徴を解説していきます。

①耐火材吹付け

耐火材吹付けの特徴
・施工費は比較的安価
・美観性はあまり良くない
もっとも多く用いられている耐火被覆の工法だと思います。
 
 
上記写真が耐火被覆の仕上がりです。
耐火被覆完了後、仕上げとして天井や柱を石膏ボードなどで囲って見えなくするケースが多いです。
 
施工の詳細については下記ページで詳細を解説しています。
 
 
製品も様々なメーカーから出されており、認定品が数多くあります。
■工法
・吹付
・コテ均し

②耐火板張り

耐火板張りの特徴
・仕上げ下地としても使用できるため、美観性に優れる
・内装工事と兼用して進められ、工期短縮につながる
けいカル板などを使用して梁や柱に直接張るか下地を設けて張り、耐火性能を確保します
 
吹付けの工程を省くことが出来て、工期短縮に繋がります。
また柱型などを小さくできるのも良い点です。
 
■工法
・ボード張り

③耐火材巻付け

耐火材巻き付けの特徴
・施工費は比較的高価
・美観性に優れる
耐火材巻付けの特徴はシートを巻込むだけで耐火性能を確保できるという事です。
 
■シートの厚さ
・1.5~3㎜
・20~65㎜
 等
 
また様々な工法がある耐火被覆の中でも薄い厚みで認定を受けており省スペースでの施工が可能です。
 
粉塵が出ない所も施工性が良いです。
■工法
・シート貼り(貼り付け)
・シート巻込み(ピン止め)

④ラス張りモルタル塗り

ラス張りモルタル塗りの特徴
・施工性が比較的悪い
・様々な形状に対応可能
およそ15~40㎜の厚さで耐火性能を確保できます。ラス網と兼用して施工することによりH鋼でも□型の柱型・梁型にすることが可能です。
標準仕様書の名称が「ラス張りモルタル塗り」となっていますがラスを使用しない場合もあります。
また吹付けの場合は①の耐火材吹き付けと同様な工法となりますが、ロックウールを使用しない所から粉塵があまり出ないのが利点です。
 
■工法
・吹付け
・コテ
・ローラー
・左官仕上

⑤耐火塗料

耐火塗料の特徴
・美観性に優れる
・一部工場施工も可能で工期短縮を図れる
耐火塗料の施工で最も特徴的なのは塗装するだけで耐火性能を確保できるという事。
耐火時間にもよりますが1㎜~5㎜程の厚みで仕上げます。見た目は通常の塗装仕上げのような仕上がりです。
火災時に材料が発砲し、構造物を守る働きをします。また屋内から屋外まで使用できます。
 
施工的な面では工場で下塗りまでの施工をすることにより、現場での工期短縮も期待できます。
■工法
・吹付け
・刷毛
・ローラー

最後に

耐火被覆の工法を説明しました。

一般には設計図で工法を指定されていますが、工期短縮案や減額案などの提案を行う際に知識として種類と特徴を知っておくことは武器になると思います。

また共通して耐火被覆の納まりとして難しい所があり、例を挙げると

・壁と柱型(梁型)の隙間の処理
・デッキプレートと梁(上フランジ)との隙間処理
・屋根材と屋根受けの梁材との隙間処理

など現場により「これで耐火性能を確保できるのか?」と悩むシーンも出てきます。合成耐火被覆の認定を受けている製品の選定など、施工前に納まりを検討する必要があります。


この記事の冒頭でも記載した通り耐火被覆の目的は「人の命を守るもの」と認識を持って、監理者などと協議をしながら施工することが重要です。

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