・移動式クレーン作業の安全計画のポイントがわかる
・移動式クレーンの能力選定方法がわかる
クレーンの選定方法
移動式クレーンを選定するにあたり、重要なポイントは3つあります。
①作業するクレーン車両が作業場所に問題なく据付けられるか
(車両動線・アウトリガーの跳出し幅・アウトリガー接地面など)
②つり荷の荷重
③クレーン能力
「何トンのクレーンが必要か」と考えたとき、上記の3点を理解していないと最悪手配したクレーンを返すはめになります。
現場初心者や、経験の浅い人は一つ一つ確認することがとても重要です。
①移動式クレーンの作業場所への据付け
移動式クレーンは一般車両と比較して車両が大きいです。
25t: 車幅 約2.6m 車長 約11.5m
50t: 車幅 約2.8m 車長 約12.3m
70t: 車幅 約2.8m 車長 約12.3m
ハイエース: 車幅 約1.9m 車長 約5.3m
ハイエースと比較しても長さが倍以上あり、幅も広い車両となります。
据付け位置までの動線計画
大きい車両が現場内の移動を問題なく出来るかを検討します。
・現場内で曲がれるか
・ゲート等の高さは問題ないか
上記の点の確認が重要になります。
据付け位置の確認
クレーン据付け位置でアウトリガーを十分に跳出し出来るかの確認を行います。
アウトリガーの最大跳出し長さの目安として
25t:6.5m
50t:7.4m
70t:7.8m
となります。クレーン据付け位置が、アウトリガーの跳出し幅を満たしているか確認します。
また吊荷の重量により、最大跳出しをしなくても計画上問題ない場合があります。
クレーンの定格総荷重表を確認し、据付け位置が狭い場合は必要なアウトリガー跳出し幅の検討も同時に行います。
アウトリガー接地面の確認
クレーン作業時は、アウトリガーを強固な地面に接地させて作業を行います。
弱い地盤に接地させて作業すると作業中にクレーンが傾いて転倒します。
埋設物(配管)等がないか、埋戻して転圧のされていない場所ではないか、などと地盤の状態を確認したうえ、敷鉄板などで安定した接地面を作り作業をします。
②つり荷の重量
クレーンで吊る材料・部材の重さを確認します。
代表的な例を挙げると
・鉄骨工事であれば柱・梁の重さ
・足場をスパンで吊る場合は吊荷時の重さ
・木造2×4の建て方の場合はパネルの重さ
・ボード材荷揚げの吊荷時の重さ
など、吊るときの荷姿の重さを把握することが重要です。
鉄骨材などは1mあたりの重さを調べれば算出できます。
※知りたい重さを鉄骨業者に聞くのが早いです。
ボード材などは1枚あたりの重量を把握し、何枚の束で搬入されるのか等を確認します。
③クレーン能力
ここの確認が一番重要です。
例えば「3tの吊荷をつりたい」という要望であれば、5tの移動式クレーンを手配すれば良いという訳ではないです。
・何m先に荷振りしたいのか
・何m高い位置に荷振りしたいのか
・何tの荷物を吊るのか
という、やりたい内容を整理したうえで初めてクレーン能力の選定が出来ます。
具体的な例として、
「18m先の高さ10mの位置に、2.5tの鉄骨を荷振りしたい」
と考えます。
作業範囲図の見方
鈴木クレーン様より引用
上記画像は作業範囲図と言い、「クレーン性能表」というものが各メーカーより出ています。性能表の中に必ず入っている図です。
※実際には使用するクレーンメーカーをの作業範囲図を確認すること。
画像は、25tラフタークレーンの作業範囲図を添付しました。
直接荷振りしたい位置を作業範囲図に落とし込むと解りやすいです。
(18m先の高さ10mの位置に青点を記入)
荷振り位置に届くブームは23.5mか30.5mだと解ります。
※ジフ(現場では孫出しと呼ばれる)は今回無いものとして解説しています。
ここまでで距離と高さは25tクレーンで要望を満たしていると解ります。
次に重量が満たしているか確認します。
定格総荷重表の見方
画像は定格総荷重表といい、吊荷の重量の許容値がわかります。
①の章で解説したアウトリガーの跳出し幅と、使用するブームの長さでそれぞれの許容荷重が解るようになっています。ですので「クレーン性能表」の中には多くの表があります。
・アウトリガーの跳出し幅
・使用するブーム長さ
を理解して、自分が確認する表を選びます。
今回のケースではアウトリガーを最大跳出し出来るとして、次のように見ます。
荷振りに必要な距離と、作業範囲図で確認したブームの長さのぶつかる所「青■」が許容荷重になります。
画像の表から読み取ると、以下のようになります。
23.5mブーム→2.45t
30.5mブーム→2.7t
ここで注意したいのが、表に記載された数字から吊具の重量を引かなければなりません。
表の下に記載がある「25tフック230㎏」と実際に使用する吊具荷重を引きます。
クレーンフックの先に吊具を使わないとして、
23.5mブーム→2.22t
30.5mブーム→2.47t
となります。
「18m先の高さ10mの位置に、2.5tの鉄骨を荷振りしたい」
というのが最初の要望でしたので、「25tクレーンでは性能を満たしていない」と考えます。
このようにして50tのクレーンで検討するなど、クレーン能力が要望を満たしているか確認をします。
側方、後方に注意
アウトリガの跳出しを最大に出来ない場合に特に要注意なのが、定格総荷重表に記載されている(全周)(前方)(側方)(後方)と記載された表の読み間違いです。
この方向の意味はアウトリガを跳出し、クレーンを据付けした後の方向を示しています。
前方→車両の前方。側方→車両の左右。後方→車両の後ろ。と意味しています。
例えばアウトリガを最大跳出しした場合は(全周)と記載されていることが多く、ブームを横に振っても後ろに振っても吊れる重量は変わりません。
アウトリガを十分に跳出せなかった場合にブームを90度横に振ると、支えとなる足の幅(アウトリガの幅)が短くなり、吊れる重量が少なくなります。
荷物を吊り、ブームを横に振ったらクレーンが転倒した。といった事故にならないように注意が必要です。
クレーンの安定度
定格荷重表には太枠で記載された部分と、太枠から外れた部分で書かれた部分があります。この太線の意味は、クレーンの安定度を示しています。
太枠内に記載された重量以上のものを吊るとクレーンが倒れます。
太枠外に記載された重量以上のものを吊るとクレーンの部材が折れたり、壊れます。
計画時には上記の程度で覚えておくと良いでしょう。
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