・施工図作図の考え方
・鉄筋、型枠、コンクリート 各工種の納まり・作業性を解説
このページでは鉄骨造でのコンクリート工事が
1.基礎
2.腰壁
3.土間orスラブ
のように構成されている建物の、コンクリート打継ぎについての考え方を解説しています。
建物について言い換えると倉庫建築や工場建築で用いられるような広い箱モノを作る建築に視点をおいています。
また鉄筋・型枠・コンクリートの納まりについても、なるべく現場初心者でもわかりやすいよう解説をしたので基本的なコンクリートの打設手順についても解るよう記述しています。
基礎コンクリート打継位置
鉄骨造におけるコンクリートの打継位置について、どこの高さで打継ぎをすれば良いかの解説です。
一般に腰壁のある鉄骨造の建物外周部は以下の画像のような納まりになります。
(GLの高さは現場により色々あります)
基礎と土間(スラブ)と腰壁の取り合いの抜粋です。
絵で見ると至ってシンプルな納まりですが、鉄筋・型枠とコンクリート打設順序を考えると意外と悩ましい納まりなのがこの形状。
基礎天端の高さ
基礎コンクリート工事では、打継ぎ位置・打設順序の検討をする際は基礎天端の高さを決めなければなりません。
基礎天端を決めるには2つ重要なポイントがあります。
・鉄骨柱下のコンクリート天端
・土間(スラブ)との取合い
鉄骨柱下のコンクリート天端
まず鉄骨柱下の高さ。鉄骨の足元のコンクリート高さを間違えると、鉄骨が納まらなくなります。
基本的には画像のように設計図の構造リスト等に基礎柱の天端高さが明記されています。
その高さで設定し、鉄骨図の柱下高さとの整合性を確認します。なおかつベースモルタルの厚さを確保できているかもチェックします。
別記事の【鉄骨造】ベースモルタルの施工方法と重要性でも詳しく解説していますが、ベースモルタルの高さは30~50㎜が一般的です。
画像のように梁より基礎柱が低くなるケースや高くなるケースなど現場により納まりは様々です。段差がつく場合は基礎コンクリート打設前に柱部分にコン止めを設置してから打設します。
また平面的な確認で、鉄骨柱のベースプレートのサイズと、柱の根巻き鉄筋が基礎天端より飛び出てくる場合は鉄筋がかわしている事をチェックします。
これも鉄骨柱が納まらなくなる場合があるので、非常に重要な確認作業です。
土間(スラブ)との取合い
次に土間との取合い部分。基礎梁天端の考え方です。
画像左のように基礎梁の天端で打継ぐか、画像右のように土間下で打継ぐか、いろいろな打継ぎ位置の検討が出来ます。結論から言うと、画像右側の土間下での打継ぎが施工的に納まり良く、スムーズに施工できることが多いです。
理由としては埋戻しの施工性の良さと、ピットがある場合はスラブ下の型枠に余計な作業が発生しないからです。
具体的にどのような事かを挙げると、画像のようになります。
画像は良くない例です。
土間下ではなく基礎梁の上端でCON天を設定したとき、埋戻しをする場合には画像のように斜めに納めなければなりません。
土間コンクリートは現場によりますが地下ピットが無い場合、鉄骨工事終了後に打設することが多いです。
埋戻しが砕石でも砂でも土でも、スタイロを敷く場合でも端部が崩れて(割れて)打継ぎ部分に砕石などが乗り、土間コンクリート打設の時の梁上の清掃などの余計な作業が発生します。
・コンクリート量も斜めになる分多くなる
基礎コンクリート後の打設順序の検討
基礎の打設までを解説しました。ここからの打設順序がコンクリート工事の作業性に大きく影響を与えます。
大きく4つの打設順序を解説します。それぞれの計画にメリット・デメリットがありますので内容を踏まえ、現場に合わせた打設計画の参考になればと思います。
B 基礎CON→①腰壁CON→②土間CON
C 基礎CON→①腰壁+梁上フカシCON→②土間CON
D 基礎CON→①土間(スラブ)CON→②腰壁CON
AとBは打設の順序は同じですが、鉄筋・型枠の納め方が変わります。
順を追って解説していきます。
また共通して基礎コンクリート打設後の鉄筋の状態は梁上フカシ筋と腰壁差筋、土間差筋がある状態とします。
A 基礎CON→①腰壁CON→②土間CON
基礎コンクリート打設後、腰壁のコンクリートを打設する順序の解説です。
先に説明した基礎コンクリート打設後の鉄筋は画像のような状態になっています。
この状態で腰壁を打設しようとすると、型枠工事の手間が多いです。
土間コンクリートを打設する側の腰壁型枠の塞ぎが画像のように、鉄筋部分を欠き込んだコンクリートパネルの作成が必要です。
腰壁のm数によりますが、全て現場合わせで鉄筋に合わせコンパネの欠き込みを行うのでかなりの手間です。コンパネではない他の方法で良い塞ぎ方法があれば良いのですが、あれば逆に知りたいくらいです、、、
また脱型時にも注意が必要で、鉄筋と型枠の隙間からコンクリートがあふれ出て固まると型枠を取るのが大変です。コンクリート打設後はすぐにあふれ出たコンクリートを取る必要があります。
・土間より先に腰壁を作ることにより土間との取合いの仕上げ補修が不要
・打継面が土間下となる為、外部からの漏水のリスクが少ない
・鉄筋は一般的な流れ・納まりで施工できる
B 基礎CON→①腰壁CON→②土間CON
Aを基準にコンクリートの打設順序は変えずに、鉄筋の納まりを変えて考えてみます。
また標準的な納まりと変わるので、設計との協議が必要と思われます。
画像右は土間(スラブ)に基礎梁がくいこんでいる場合、梁上フカシ筋を無くします。
その際土間(スラブ)差筋が型枠の邪魔にならないよりにする必要があります。また捨て配筋しないと差筋を固定できない場合があります。
・土間より先に腰壁を作ることにより土間との取合いの仕上げ補修が不要
・打継面が土間下となる為、外部からの漏水のリスクが少ない
・型枠の施工が容易になる
C 基礎CON→①腰壁+梁上フカシCON→②土間CON
Aを基準に鉄筋の納まりは変えず、コンクリートの打継ぎ位置と型枠の施工を変えた考え方です。
差筋を折り曲げていなければ腰壁の返し枠を施工出来なく、折り曲げていれば梁上フカシ部分の返し型枠が出来ません。
・土間より先に腰壁を作ることにより土間との取合いの仕上げ補修が不要
・打継面が土間下となる為、外部からの漏水のリスクが少ない
・鉄筋は一般的な流れ・納まりで施工できる
・打設回数の検討が必要(型枠回数が増)
D 基礎CON→①土間(スラブ)CON→②腰壁CON
最後に土間(スラブ)を先行した打設です。
この打設手順を採用する場合は
・ピットがあり床を先行して打たなければならばい
・床仕上げがあり土間(スラブ)の補修をしても大丈夫な場合
上記2つのような場合に用いられると考えられ、土間(スラブ)が打放仕上げの場合と漏水の考えからはあまりお勧めしません。
画像のように型枠を貫通する横の差筋が無い為、土間(スラブ)並びに腰壁の鉄筋・型枠工事が円滑に進みます。施工業者の作業性の事を考えると一番きれいな納め方となります。
土間(スラブ)打放仕上の場合は注意
ただし画像右のように腰壁型枠の返しの固定時に、土間(スラブ)に釘等で固定しなければなりません。また腰壁打設時に、土間の不陸があり型枠と土間の間からノロが出てくる可能性があり仕上げに大きく影響が出る可能性があります。
打継部の処理
土間と腰壁の打継部分から室内への漏水が考えられます。
止水板ならびに何らかの止水処理をしなければ建物内に被害が出る可能性があります。
・打継部の止水処理、床の補修を見込んでいる(見込める)場合におすすめ
・土間(スラブ)打放し仕上げの場合は補修が必要(補修跡が見える)
まとめ
基礎の打設から、コンクリートの打設手順を解説しました。
打設手順により床仕上げに影響が出たり打継ぎ部分からの漏水などと、建物に影響を与える場合もあり良く検討することが重要です。
設計の意図をくみ取り、どう施工計画するかを決める事は現場監督の重要な仕事の一つです。
施工性や仕上げ等を考える参考になればと思います。
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