・建築現場の距離や角度を出す測量機器を紹介
・現場での使用事例や墨出の手順を紹介
建築現場の測量機器
建築現場では、建物を建てるために正確な距離・角度を出す必要があります。この記事ではどのような機器を使用しているのか、また使い方の参考事例を紹介します。
代表的な機器は2つありトータルステーション・トランシットが挙げられます。
どちらも似た形状で、測量できる内容が若干違います。まず大きな違いを挙げますと
トランシット:角度を測量する機械
トータルステーション:距離・角度を測量する機械
トータルステーションはトランシットの機能が含まれているといった内容です。
それでは1つずつ機能の解説をしていきます。
トランシット
トランシットは角度を出す測量機器です。
現場ではよく略称で「トラ」などと呼ばれます。平面的に四角形の建物があれば、角となる90度をこの機械で出していきます。90度は建築用語で矩(かね)と言われ、「トラで矩手を出す」など現場で機械を使用するときは業界用語が多く使われます。
トータルステーション
トータルステーションは角度と距離を出す測量機器です。
光波と呼ばれる距離を測定できる機能を持っています。現場では略称で「光波」などと呼ばれたりします。トランシットでは出せない距離を出すのには「プリズム」と呼ばれるものをセットで使用します。
トラと光波の見分け方は、非常に似た形状ですがケースにプリズムがあるかないかを見れば1発で解ります。
現場での使用事例・墨出し手順
使用方法は三脚にトラを設置して測量点の真上(鉛直)に据付けて使用します。測量点とは、よく使うポイントを例に挙げますと逃げ杭や通り芯の交点などのことです。
また通り芯は、現場では親墨と呼ばれます。基準墨とも呼びます。現場で出す全ての墨出しはこの親墨を基準に測り出しします。基礎CON型枠の墨などを子墨といい、親墨は現場監督や墨出し業者が墨出しし、子墨は型枠業者が墨出しをするなど墨出の順序は親墨を先に出し、後続して子墨を出します。
(現場により子墨を墨出しする業者は違います)
それでは現場の墨出しを例に使用事例を紹介していきます。
画像の図面で、捨コン(灰色部)上に逃げ杭を使って親墨(赤線)を墨出ししていく想定で解説していきます。緑線の中は布堀り部として、根切り底はGL-1000とします。
手順1 逃げ杭に機器を据付ける
逃げ杭の真上に測量機器をセットして、反対側の逃げ杭を覗き込みます。この機器の据付けでX4通り(赤線)の親墨が捨コン上に出せます。
次に測量機器を移動します。Y1通りの逃げ杭にセットします。
同じようにY1通りの親墨を出せます。すると、捨コン上にX4とY1通りの交点が出来ます。
手順2 捨コン上に機器を据付ける
基本的な流れは外周4辺の親墨を出して、その後中の通りを出していきます。
まずは逃げ杭から出した墨の交点に測量機器を移動します。
ここからの作業が非常に重要です。またトランシットとトータルステーションで大きな違いが出てきます。
出した墨の確認
まずは確認作業です。親墨が90度で出せているかを確認します。確認方法は、長手方向に出した親墨を測量機器を使って見て角度測定の「0セット」します。(この場合X4通りを見て0セット)
次に機器で90度首を振ったときにY1通りの墨を見てピッタリ親墨があっていればOKです。少しでもずれていれば
- 機器の据付け方が悪い(水平など)
- 逃げ杭がずれている
上記のような原因が挙げられます。据付け位置から見て、逃げ杭と出した墨の通りがズレていれば据付け方が悪いことになります。
(短手からやると誤差があった場合大きくなるため)
・やり直しが発生する可能性があるので、手順1では交点だけ墨出しておく
距離を出す
90度の確認が出来たら次に距離を出していきます。出し方は
- 巻き尺を使用する
- 光波を使用する
どちらかの方法で距離を出します。巻尺は何10mもあるとたるんで正確な距離が出せません。また今やトータルステーション(光波)での距離出しが主流です。ここでは光波を使用すると仮定して話を進めます。
光波とプリズムを使用して、親墨上にY1通り(12m)とX4通り(20m)位置でポイント付けをします。
手順4 距離と角度を出す
手順3までで画像のような状態になります。外周部の最後のポイントであるX1,Y6通りの交点を出すために機器をX4,Y6に移動します。
移動したらX4通りを見て機器の角度を「0セット」し、90度角度を振ります。
通りを出せたら12m地点でポイント出しをすると外周部最後のポイントが出ます。
手順5 外周部親墨の確認
画像の通り赤線部のコの字型に通りを出せました。据付け位置を移動して外周部最後の確認です。
理論上は画像の通り2ヵ所90度を出せているので、距離の確認をすると据付け位置からX1,Y1のポイントがピッタリ20mになっているはずです。なっていない場合は据付けが悪かったり、測量ミスです。
測量機器の使い方に慣れていないとここで誤差が出てしまうことが多いです。誤差がある場合は手順1から確認して墨の出し直しが必要です。
手順6 中通りの墨出し
外周部が誤差なく出せればあとは簡単で、各通りの交点を出して繋いでいくだけです。
赤文字の据付け位置箇所から「距離の測定」で赤丸のポイントを出していきます。出し終わったら青文字の据付け位置に移動して同じく「距離の測定」で青丸のポイントを出していきます。
外周部のポイントを全て出し終われば、各通りに機器を移動しながらポイントを繋いで終了です。
まとめ
基本的な墨出しの手順を紹介しました。距離も出せるトータルステーションを使えばこのくらいの規模の建物なら誤差無く出せます。
墨出を自分達で行う建設会社もあれば、全て墨出し業者にお願いする会社もあります。基本的な知識としてこの記事の内容を紹介しました。
また建物の規模や根切り深さで墨出しの手順が全く変わります。
住宅程度の規模で根切りが浅ければ建物の四隅のポイントは測量機器の移動無しで出せます。
また紹介した墨出方法では10回ほど測量機器の移動が必要ですが、墨出し上級者であれば3回ほどの移動で全ての墨を出す事が可能です。
上級者は出したいポイントまでの角度と距離を把握出来れば現場のどこに測量機器を立てても出せます。(逃げ杭や通り芯の交点に据え付ける必要がないです)
その場合は関数電卓や機能の良いトータルステーションが必要です。
自分で墨を出す場合は、墨出手順を頭で思い浮かべて楽に正確に出せるように心がけましょう。
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